しゃっくりとGABAの関係 ~しゃっくりと神経伝達物質part1~

しゃっくりの治療

こんにちわ、今回もしゃっくりについて語っていきます。暑い日が続きますが、皆さん胃腸の調子はいかがでしょうか?胃腸の不調がしゃっくりの原因になることもあります。しゃっくりが出たら、冷たい食べ物を減らし、やさしい食事で胃腸を整えてあげてください。

しゃっくりの病態、しゃっくりの神経伝達経路についてお伝えしてきました。
今回は、さらに深堀りして、神経伝達物質について、お伝えしてみようと思います。
・しゃっくりの病態に関しては →こちら
・神経伝達経路については →こちら

しゃっくりの神経伝達経路は、反射弓(大脳を介さない早い反応)であることを他の記事で紹介しました。その反射弓の中枢は延髄に存在するらしいことまで明らかになっています。

では、その中枢である延髄ではどのような神経伝達が行われているのでしょうか?
そこで、神経伝達物質がとても重要になります。

神経伝達物質とは、神経から神経へ情報を伝達する重要な物質です。
主に、神経終末から発せられ、次の神経へ信号を届けます。


神経伝達物質の種類や受容体の違いにより、神経が興奮や抑制されたりします。
体を正常に保つために、神経伝達物質の調節が重要になります。

神経伝達の基本である交感神経や副交感神経も、神経伝達物質によってコントロールされています。
神経伝達物質のバランスが崩れることで、不快な症状や病気にも影響しています。しゃっくりの原因にも、その神経伝達物質の乱れが関係している可能性があります。

しゃっくりと関連が強いとされている神経伝達物質に、GABAセロトニンがあります。
GABAはγ-アミノ酪酸の酪酸の略語です。

GABAは脳や脊椎などで、抑制系の働きをする神経伝達物質として知られています。
興奮した神経を落ち着かせたり、ストレス、そして睡眠等にも深く関わっています。

GABAとしゃっくりの関係については、様々な報告があります。その多くは、GABA関連神経が抑制された時、しゃっくりが誘発されるというものです。抑制系のGABA神経が抑制されている、つまり抑制が外れた状態でしゃっくりが発生すると考えられています。

そこから、通常時しゃっくりは延髄のGABA関連神経によって発症が抑制されています。何かの原因により、GABAによる抑制が解除されることで、しゃっくりが発生する可能性が指摘されています。

この説を裏付ける報告として以下があげられます。

・お酒としゃっくりの関係
お酒を飲むとしゃっくりが起こる方がいます。これはGABAによる抑制が解除されることで、しゃっくりが誘発 されると考えられています。よく見るしゃっくりをしたヘベレケ画像はかなり酩酊している画像や絵が多いような・・・。どれくらい飲むと発生するのでしょう。お酒が好きな私にとって気になるところです。

・しゃっくりの治療薬
しゃっくりを抑制するというバクロフェン(ギャバロン®、リオレサール®)は、GABA作動薬です。
GABA神経を亢進させることで、しゃっくりを抑制していると考えられています。これは、動物実験でも証明されています。
※ヒトに対する大規模な臨床試験の報告はなく、現段階では保険適応外です。

このように、いろいろな研究報告から、神経伝達物質GABAはしゃっくりと関連しているというのが現時点での一般的な見解です。しゃっくりはGABAによりコントロールされていて、そのバランスが崩れるとしゃっくりが発生ということです。

同様に、神経伝達物質であるセロトニンもしゃっくりとの関連が深いと言われています。
またの機会にご紹介できればと思います。


チョコレートのGABAです(江崎グリコ株式会社)。GABAを経口で摂取しても脳まではほとんど行かなそうですが、ストレス軽減効果が実証されているようです。どんなメカニズムなんでしょう。グリコGABAとしゃっくりの関係については不明ですが、試してみても?

たかがしゃっくり、されどしゃっくり・・・。
今回紹介させていただいた内容も、全てのメカニズムが解明されているわけではありません。
まだ、まだ謎の多いしゃっくりです。

最後までマニアックなしゃっくり話にお付き合いいただきありがとうございました。

参考文献
Neurosci. Res. 30, 287–293 (1998).
BMJ Supportive and Palliative Care vol. 8 1–6 (2018).
SpringerPlus vol. 5 (2016).
JJAAM. 30, 115-20(2019).