柿のヘタとしゃっくり ~柿のヘタの抗けいれん作用~

漢方薬 しゃっくり しゃっくりの治療

皆さん、こんにちわ。

バタバタしているうちにすっかり年末になってしまいました。前回は、しゃっくりの治療薬として知られる「柿のヘタ」の主成分について紹介しました。→前回の記事はこちら

今回は実際に「柿のヘタにしゃっくりを止める効果があるのか?」について考えていきたいと思います。

 

柿のヘタ製剤

前回のおさらいですが、柿のヘタを使った処方には以下の2種類があります。
①柿蔕湯:柿のヘタ、丁子、生姜(古くから伝わる漢方処方。エキス剤も市販されています。)
②柿のヘタ煎:柿のヘタのみを煎じたもの
②は実際に病院内で煎じて、処方薬として患者さんに服用している病院もあります。

 

しゃくりとGABA

しゃっくりは神経伝達物質の一時的な障害により発症することは以前の記事で紹介しました。神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)がしゃっくり発症と深い関連があることが知られています。

ベンゾジアゼピン受容体 GABA しゃっくり

GABAは抑制系の神経伝達に関わっており、しゃっくりを発症するのを抑えています。つまり、何らかの理由でGABAの働きが抑えられると、しゃっくりが発症すると考えられています。

 

ピクロトキシン誘発痙攣

柿のヘタとGABAの関連については、 ピクロトキシンという痙攣誘発薬を用いた動物実験が報告されています。ピクロトキシンは、GABAが作用する受容体(GABAA受容体)を遮断することでGABAの働きを無効化します。

ピクロトキシンを大量投与することで、GABAが抑制され、興奮性神経が異常に増強します。その結果、痙攣をおこします。もちろんピクロトキシンが臨床治療に使われることはありません。

 

 

柿のヘタの主成分が痙攣誘発を抑制

ピクロトキシンのみを投与したマウスと、柿のヘタ(柿蔕湯)を投与したマウスを比較したころ、
柿のヘタを投与されたマウスが痙攣が発症するまでの時間が延長したと報告されています。さらに、柿のヘタの主成分であるウルソール酸、オレアノール酸の投与でも同様に痙攣誘発までの時間が延長されたとされています。つまり、柿のヘタの投与が、GABA受容体拮抗するピクロトキシンの効果を減弱した可能性があります。

しゃっくり 柿のヘタの効果

柿のヘタの痙攣抑制効果

以上の報告から、柿のヘタはGABAと関連した抗痙攣作用を有す可能性があると考えられます。しゃっくりがGABA関連の神経伝達障害とすれば、柿のヘタがしゃっくりに効果があるというのもうなずけます。

 

近年、漢方薬の効果が改めて認識され、臨床試験や動物実験が改めて行わるれ効果が実証されるものも少なくありません。

柿のヘタのしゃっくりへの効果が実証される日も近いかもしれません。

 

今回は柿のヘタの抗痙攣作用についてお伝えしました。
たかがしゃっくり、されどしゃっくり・・・。
柿のヘタ、古人の知識、経験、伝統も現在の医療につながっているものも多いです。大切にしていきたいですね。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

参考文献
・癌と化学療法 46(7) 1165-1170 2019年7月
・J Pharmacol Sci. 2016; 130(30): Suppl. S218.