柿のへたとしゃっくり ~臨床効果は?~

しゃっくりの治療

こんにちは。あと数時間で新年になります。

胃腸に負担がかかる年末年始はしゃっくりの好発時期かもしれません。しゃっくりが出た場合にはしゃっくりストローからの柿のヘタ煎を試してみようと思います。

 

前回までのおさらい

2021年最後の更新も、しゃっくり特効薬として知られる柿のヘタについてお伝えしたいと思います。

柿のヘタの主成分
前々回は、柿のヘタに含まれる成分はトリテルペノイドという物質が主で、そのトリテルペノイドがしゃっくりに効果があるという可能性をお伝えしました。

柿のヘタに関する動物実験
前回は、柿のヘタエキスを用いた動物実験結果をご紹介しました。柿のヘタエキスがマウスのけいれん抑制効果が示されていました。

今回は、我々ヒトに対する効果について、考えてみたいと思います。

 

しゃっくりの分類

ヒトが起こすしゃっくりには、中枢性(CNS;central nerve system)非中枢性(non-CNS)の2種類があると言われています。

・中枢性しゃっくり(CNS):
しゃっくりの中枢があるとされる中脳・延髄に器質的な障害によりしゃっくりが引き起こされる。
(例)脳梗塞 脳腫瘍 脳出血 など

・非中枢性しゃっくり(non-CNS):中枢性しゃっくり以外。末梢性しゃっくりともいわれる。
(例)胃刺激(おなかいっぱい、胃荒れなど)、咽頭(後壁)の刺激、臓器障害 など

・薬剤性しゃっくり:薬剤使用後に誘発されるしゃっくり
薬の副作用で誘発されるしゃっくり。こちらについての詳細は別記事で。
(例)デキサメタゾン(ステロイド製剤)、シスプラチン、など

男性に多いしゃっくりですが、あるシステマティックレビューによると、中枢性しゃっくりには性差がなく、非中枢性のしゃっくりでは男性が多いという結果が示されています。

 

柿のヘタの有効率

いままで、柿のヘタの臨床効果について、いくつか報告があります。

それらの論文によると、しゃっくりへの有効率は約50~80%です。意外に効果がありそうですね。残念ながら、二重盲検の前向き臨床試験(一番信頼される臨床研究)の結果ではなく、単施設による後ろ向き試験が主です。

報告によって有効率に差があります。効果がある人、ない人に何か特徴があるのでしょうか?

 

中枢性のしゃっくり VS 末梢性のしゃっくり

前述した、中枢性、非中枢性しゃっくり、どちらに効果があるのでしょう?

中枢性しゃっくりと非中枢性しゃっくりへの効果を比較した研究があります。そこでは、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などを原疾患に持つ患者において、より効果が大きいという結果が報告されています。

このことから、柿のヘタはその原因によって、効果に差が出る可能性があります。別の報告では、性別、年齢、BMI、身長、体重の違いによる効果の差は見られなかったようです。

また、薬剤性しゃっくりへの効果を示したという論文もあります。

 

がん治療中のしゃっくりに対する効果

がん治療、とくに化学療法(抗がん剤を用いた治療)を行っている患者さんにしゃっくりが発症することが知られています。

化学療法を行っている患者の16%程度にしゃっくりが発症していたという報告があります。がん治療を行っている患者さんは治療による副作用やがん性疼痛もあります。しゃっくりによって、ストレスがより多くなることが考えられます。

化学療法によるしゃっくりの原因の一つに薬剤があります。抗がん剤、もしくは副作用予防に使用されるステロイドがしゃっくりを引き起こす代表薬剤です。

化学療法による、しゃっくりの治療に柿のヘタ煎が用いられることがあります。

化学療法中にしゃっくりを発症した患者さんを対象とした研究では、70%以上にしゃっくりの改善効果が見られたという報告があります。さらにしゃっくりに治療に用いられるメトクロプラミドと柿のヘタの比較でも、柿のヘタ煎の方が有効だった結果もでています。

薬剤性しゃっくりに対しても、高い臨床効果があるようです。

 

柿のヘタ煎に副作用はある?

どんな薬にも副作用はつきものです。

しかし、柿のヘタ煎による副作用の報告はありません。これらのことから、がん治療にともなうしゃっくりに効果があり、また安全に使用できると考察されている論文もあります。

副作用が少なく、臨床効果も高い可能性があり、試しても良いかもしれませんね。今後、前向きの臨床試験、およびメカニズムの解明が進めが良いなぁと思います。

 

まとめ

柿のヘタの臨床効果について述べてきました。
要点は以下の通りです。

・非中枢性のしゃっくりより中枢性の方が効果が高い
・化学療法に関連するしゃっくりへの効果が高い
・服用する人の体格に関係なく、効果がみこまれる
・副作用の報告はない
・前向きの臨床研究報告はなく、効果が実証されているわけではない

柿のヘタ、普段なら捨ててしまう部位ではありますが、しゃっくり治療に注目の生薬です。今後も注目していきたいと思います。

たかがしゃっくり、されどしゃっくり・・・。
来年も、しゃっくりについて有用な情報を掲載できればと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
皆さん、良いお年を。

※柿のヘタ煎:柿のヘタのみを煎じたもの

参考文献
・Gender Differences in Hiccup Patients: Analysis of Published Case Reports and Case-Control Studies. J. Pain Symptom Manag. 2016, 51, 278–283.
・吃逆における柿蔕湯の臨床効果 , Jpn J Pharm, 27, 29-32 (2001) .
Clinical Efficacy of Shitei-decoction for Hiccups: Jpn J Pharm Health Care Sci., 31, 228-232 (2005) .
・吃逆に対する柿のヘタ煎の有効性, 癌 と化学療法, 2019, 46, 1165-1170.