コロナ禍の中、皆さんはいかがお過ごしですか?
今回は、新型コロナ感染症(COVID-19)としゃっくりについて、お伝えしたいと思います。
COVID-19 による感染症の症状は様々伝えられています。発症初期には発熱・鼻汁・咽頭痛・咳嗽などの感冒症状が起こることが多く、その他にものどの痛み、味覚障害、下痢などの症状も伝えられています。さらに重症になると、呼吸困難や胸部痛などの症状も起こります。
(日本感染症学会の感染症クイック・リファレンスより)
その他にも、様々な症状との関連が伝えられている新型コロナウイルス感染症ですが、その一般的ではない症状としてしゃっくりが発生した症例が報告され始めています。
2021年9月現在 COVID-19 と しゃっくり(Hiccups)で検索すると10報程のケースレポートがヒットします。今回は、そのケースレポートのうちいくつかを簡単にご紹介します。
世界で初めてCOVID-19 としゃっくりの関係を報告
Title: Persistent hiccups as an atypical presenting complaint of COVID-19. (2020年4月Accept)
既往に高血圧と心臓疾患のある62歳 男性。4日間しゃっくりが止まらず受診。その他に症状はなかった。レントゲンにて肺炎像があり、検査の結果COVID-19陽性となり治療を行った。しゃっくりに対する治療については言及されていないが、状態が改善し退院と記載。
著者は、①しゃっくりを詳細に評価することの重要性と、②COVID-19の非典型的な症状としてしゃっくりを認識すべき、と主張している。
The American Journal of Emergency Medicine, 38(7), 1546.e5-1546.e6.
治療前後14日間もしゃっくりが継続
Title: Persistent hiccup: A rare presentation of COVID-19 (2020年7月Accept)
既往に高血圧がある48歳 男性。7日前からしゃっくりが出始め、どんどんひどくなるため受診。発熱も認め、検査の結果COVID-19 陽性となり治療開始。しゃっくりに対する治療として、胃薬(PPI)、ドンペリドン、バクロフェンが追加された。バクロフェンを服用後、しゃっくりは徐々に改善。受診前から改善まで計14日間もしゃっくりが継続。
著者の主張として、COVID-19としゃっくりの正確な相関関係を説明するのは難しいが、今後も症例集積が必要である。しゃっくりを訴える患者に対しても、感染症を疑い診療にあたるべき、としている。
Int. J. Emerg. Med. 14, (2021)
薬剤抵抗性のしゃっくり、酸素化と炎症が関連か?
Title: A Rare Case Report of Persistent Hiccups as an Atypical Presentation of COVID-19(2021年2月Accept)
高血圧の既往がある61歳 男性。2日前よりしゃっくりが発症し受診。胸部痛と発熱の症状もあり。検査の結果COVID-19 陽性となり治療開始。しゃっくりがあまりにひどく食事困難、呼吸困難感も出現。しゃっくりの治療としてクロルプロマジンは効果見られず、メトクロプラミド頓用で一時的な効果のみ。酸素化、炎症反応が改善するとともに、しゃっくりも改善した。
著者は、しゃっくりの原因となるような所見は見当たらず、酸素化や炎症マーカーの改善としゃっくり改善が同時期だったことから、サイトカインストームによる影響がしゃっくりと関連があるのではないかと考察。
https://doi.org/10.7759/cureus.13625
新型コロナ感染症の治療後に出現したしゃっくり
Title : Case Report: Two Cases of Persistent Hiccups Complicating COVID-19 (2021年3月Accept)※本ケースレポートは2症例を掲載、うち第2症例のみを以下掲載
小児麻痺、高血圧の既往のある68歳 男性。COVID陽性にて入院治療。退院する2日前よりしゃっくりが出現し、メトクロプラミドの処方を受け退院となった。その2日後、しゃっくリが継続するため再診。クロルプロマジンの投与を開始し、3日後にしゃっくりが消失。
著者らは、しゃっくりを伴わないCOVID治療後に、持続的なしゃっくりが発症した初めての報告であるとしている。
Am. J. Trop. Med. Hyg. 104, 1713–1715 (2021).
最年少の報告
Title: COVID-19 presenting as persistent hiccups: a case report (2021年7月Accept)
29歳 男性。2日間しゃっくりが持続して救急外来を受診。その他の症状として、微熱、咳、軽い呼吸困難感があった。胸部CTにて肺炎像があり、検査にてCOVID陽性。重症基準を満たさないため、対処療法薬のみで自宅退院となった。しゃっくりに対しては、息ごらえ(バルサルバ法)で収まらず、クロルプロマジンが処方され、服用後10時間後にしゃっくりは改善。
https://doi.org/10.1590/S1678-9946202163062
全ての報告の紹介はできませんでしたが、表を引用させてもらいました。
(doi:10.1590/S1678-9946202163062. のFigを日本語改変)
これらの報告は、全てケースレポート(症例報告)なので、COVID-19感染症 としゃっくりの関係を証明したものではないことにご注意ください。今後、大規模な調査の中で、しゃっくりとの関連も明らかになるかもしれません。
ただ、多くの論文で述べられていますが、しゃっくり は新型コロナ感染症の非典型的な症状の一つである可能性はあるかもしれません。特に医療関係者の皆様は、たかがしゃっくりと考えず、新型コロナ感染症も頭の片隅に置いたうえでの、詳細な原因検索を検討いただければと思います。
たかがしゃっくり、されどしゃっくり・・・。
今回は、コロナ感染症としゃっくりについて論文を紹介しました。
症例はすべて男性ですね。しゃっくりと言えば男性、コロナとも何か関係が・・・?
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
世界が感染症におびえず生活できる日が到来するのを願うばかりです。