みなさん、こんにちは。
秋が深まり、冬の訪れを感じる今日この頃です。秋の果物といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?
我が家では、断然「柿」です。
色合いも他の果物ではない美しさがありますし、何より優しい味が大人気です。また、買ってからすぐに食べるもよし、少し柔らかくなってから食べるもよし、移りゆく味わいも魅力です。
そして、皆さんがあっさり捨ててしまう「柿のへた」は、しゃっくりの薬になるんです!
柿のへたとしゃっくり
「柿のへた」はしゃっくりの特効薬として古くから使われてきました。
柿蔕(シテイ)とも呼ばれ漢方の一種として知られ、乾燥させた柿蔕を煎じた煎じ汁がしゃっくりを抑えるとされています。実際に、現代の医療現場でも、柿のへたを煎じたものが処方されています。
水戸黄門の時代にも柿のへたは使われていました。→水戸黄門としゃっくりについてはこちら。
漢方処方「柿蔕湯(していとう)」
医療現場では、柿のヘタを煎じた「柿のヘタ煎」が使用されることが多いようですが、漢方処方としては「柿蔕湯」として知られています。柿蔕湯は柿のヘタ、丁子(ちょうじ)、生姜(しょうきょう)という三つの漢方を混合したものです。市販の漢方薬としても「柿蔕湯」(エキス剤)を購入することができます(市販名:ネオカキックス細粒 小太郎漢方製薬株式会社)。丁子や生姜は矯味や体を温める作用のみで、しゃっくりへの効果はないという報告があります。ということは、やはりしゃっくりに効果があるのは、柿のヘタ ということになります。
なぜ効く?柿のへた
生薬や漢方の多くは様々な効能・効果がありますが、柿のへた(柿蔕)の効果はしゃっくり一択!!
なぜしゃっくりに効果があるのでしょうか?
しゃっくりの病態は横隔膜の不規則な収縮と、声門の閉鎖が当時に起こってしまう症状です。症状が発症するには、様々な神経伝達が関与していることが知られています。柿のへたは、その伝達経路のどこかに作用してしゃっくりを抑制しているのではないかと考えられています。特に、GABAという神経伝達物質との関連を示唆する研究報告もあります。
実際のところ、柿のへたとしゃっくりについて証明した臨床試験はありません。
しかし、古くから使われ、また様々な臨床経験や症例報告から現代でも使用されているというのが現状です。
柿のへたの成分
しゃっくりに効果があるという、柿のへたの成分はどんな物質なのでしょうか?柿のヘタの成分を抽出して、その成分を調べている研究チームの報告では、柿のヘタは多成分が含まれているが、その主成分はサポニンという物質ではないかとされています。サポニンとは、植物に広く存在する配糖体(糖と炭水化物の複合体)です。多くの生薬にも含まれていて薬効の重要な役割をしています。
柿のヘタに多く含まれるサポニンとして、ウルソール酸、オレアノール酸、ベツリン酸があります。
これらが、しゃっくりにどのように効果があるのかはわかっておりません。今後、研究が進めばとしゃっくりに特異的に効果のある薬剤が登場するかもしれません。
今回は、しゃっくりの特効薬として知られる「柿のヘタ」の成分について記載しました。
「柿のヘタ」の実際の効果に関する研究等についてお伝えれできればと思います。
たかがしゃっくり、されどしゃっくり・・・。
柿のヘタ煎は、えぐみなどなく、結構さっぱりした味わいです。
しゃっくりが出た際に、ご賞味あれ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<参考文献>
・難波恒雄 , 和漢薬の辞典 . 2009. 朝倉書店
・Ishi i -Nozawa R, et.al. , J Pharmacol Sci, 130, Suppl . S218 (2016) .
・“厳氏済生方 ; 厳氏済生続方 ,” 北里研究所附属東洋医学総 合研究所医史文献研究室編 , 和刻漢籍医書集成第 4 輯 , 1988, エンタプライズ .
・細谷龍一郎, 癌と化学療法 Volume 46, Issue 7, 1165 – 1170 (2019)